山の茶屋 (やまのちゃや)
とてもうなぎがお好きな旧い知人がいる。
以前は最も重要なお客様だったのだが、もうかれこれ15年以上のお付き合いを経て、ビジネスというより人生の先輩としてアドバイスをいただく関係になっている。
この方のリクエストで赤坂山王日枝神社の境内にある「山の茶屋」にうかがった。
私も始めてきた場所なのだが、表通りは赤坂溜池の雑踏であるのに、日枝神社を上って山の裏側、日比谷高校の目の前に店がある。とても東京のど真ん中にこんな静かな場所があるのかと思えるほど、閑静な環境である。
すぐそばに議員会館、国会議事堂を控える為、永田町の方々の会合によく利用されているのだという。たしかに店の前につながる路地は、黒塗りの大型車がたくさん控えていた。
日本の政治を語る場所としては幾分健全ではなかろうか。
同じ赤坂でも料亭街とは趣が異なり、なんといっても江戸城の守護として古くから祀られた日枝神社の境内にあるのであるから。来るお客の素性のせいか、仲居さんの礼儀、マナーも一流である。芸者遊びをする客もいなければ、酔って騒ぐ迷惑な客もいない。ただ周囲の鬱蒼とした雑木林の風音だけが気持ちよく時間を演出している。
一年に何度もお会いできる方ではないので、お話をタップリ伺おうと個室を用意した。

肝焼きのたれは甘すぎず、どちらかといえば醤油の辛さが舌に残る塩梅。
この辛さが冷酒をそそるのである。

蒲焼はくどくなく、大きさもちょうど良い。
丁寧に焼き上げられたうなぎの香りは、うなぎの育った環境の良さを感じさせ、べったりとせず、かといってバサバサとせず、皮の硬さもちょうど良い。
実に格調の高い、品の良い蒲焼であった。
大恩人の「頑張ってるようだし、安心した。」という言葉をお聞きし、「私の方こそ」とご返事した。
次にお会慰する時にはまた特上のうなぎを食べましょう。

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