この本は、技術のセンスについて述べているもので、技術のセンスとはなにか?それはどうすれば身につくか?ということを著者の体験から解き明かしています。私は、この著者を小説家であり、庭園鉄道の本の作者であるとして以前から認識していましたが、この新書は大変示唆に富んでいると思います。
システム開発に携わる技術者には、技術に対する勘というかセンスというか、何かことが起こったときに直感的に原因が推察できる感覚が、長い経験のなかで身についてくるものです。それは、新しいシステムを作るときに、設計段階で技術者の頭の中に出来上がったシステムの姿が浮かび上がり、それを設計図に落としていくという感覚と同じだと思います。
世の中の技術がアナログからデジタルが主流に変わって、何でも1/0でけりがつきそうですが、システムで問題が生じるのはアナログの部分です。アース、雑音、電源といった設計時には問題ないと思っていた項目が、システムが現場に入ったときにトラブルの原因になることがあります。これらのトラブルの解決は、デジタルの時代から入った技術者には難しく、アナログ時代からの技術者に一日の長があると思います。だからと言ってアナログを経験した技術者全員が技術のセンスを持っているわけではありません。
著者は、子どものころから50歳を過ぎた現在に至るまで工作好きで、自分の手を動かして物を作り続けており、そのことが技術のセンスを身につけることに役立ったといっています。そして、子どもに大人が夢中になって工作に打ち込む姿を見せることが、子どもの興味を引き出しやがて子どもが工作をするようになれば、その子に技術のセンスがつくようになると言っています。
自分自身が、小学生6年生の夏休みの作品にゲルマニウムラジオを作って以来、真空管ラジオや真空管のオーディオアンプを作ったり、真空管のテレビを直したり、とにかく自作することをやってきたので、著者の意見には共感するところが多くあります。私の家族は物がこわれると何でも私に修理を依頼してきます。ほとんどのものは直すことができるので、これも技術のセンスかなと思います。
